「イタロ」というのは野生のいたちにつけた名前だ。イタリアのあの作家やだれかれのことではない。イ太郎、iTaroと表記するのもありか。
もう20年近く前になる。房総半島の海ぎわの低山
で、まだ目も開かない仔を拾い、ひとり立ちするまで東京の自宅で育ててからもとの藪に帰した。たった6週間のことだが、野生のいたち、イタロとの日々は驚きの連続だった。小さいながらいっぱしの野獣へと変貌をとげ、それ以上人間の環境では暮らせないぎりぎりの時点での別れだった。
はあれこれ迷うことなく用意してやれた。だが、野生動物としてどう扱ってやったらいいのか。そもそもいたちを手元で飼育するケースなどほぼないなか、いろんな動物記を読み漁り、いたちの近縁動物に関する記録が思わぬ参考になった。なかでもスコットランド人のギャビン・マクスウェルの『カワウソと暮らす』(冨山房百科文庫)は深い洞察にみちていた。
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