そここうしているうちに、アメリカ大統領候補ドナルド・トランプも色あせるようなニュースが世界を揺るがしはじめている。「パナマ文書」の流出で明らかになった、世界中の要人たちの資産隠し疑惑である。
そして、当方のブログにネタを提供してくれるかのように、アイスランドの首相が辞任した。
アイスランド首相、シグムンドル・ダーヴィズ・グンロイグソンは、前に自分に対する疑惑を否定した嘘もたたって、ぐずぐず言い訳などせず、あっさり辞任した。
やはりそうか。「死なないもの、ただひとつ、死後の名声」はしっかり生きているのだ。 世界一早く非を認めて辞任したことで、多少なりとも名誉は保たれたわけだ。
前の首相をつとめた女性政治家、ヨハンナ・シグルザルドッティルが彼の辞任を強く求めたという。ちなみにこのヨハンナは同性婚を実行していることでも知られている。
(前に書いたように、例外もあるが、アイスランド人は姓を持たず、父称の前の部分が自分の名前になる。辞任した首相は「グンロイグルの息子、シグムンドル・ダーヴィズ」ということになる)
アイスランドネタのついでというか、映画『最後の一本』に悪乗りして、アイスランド料理の「牡羊の睾丸のゼリー寄せ」を紹介しておく。
hrútspungar(「牡羊の」+「袋」) |
ふだん食べる料理ではない。特定の季節の風物のようなものだ。昔の農民は、食料にする羊を秋の終わりに屠り、保存食にしておいて、春になって動産たちの活動がさかんになるまで、食いつないできた。冬至も過ぎ、気候的にはいちばん厳しい1月から2月にかけての時期は、昔の暦でþorriソルリと呼ばれ、この時期、昔をしのんで「þorrablótソルリ季の生贄」という特別料理を食べるのが今ではならわしとなっている。肝臓や血を材料にしたソーセージ、羊の顔の燻製などのあいだに、この「牡羊の睾丸のゼリー寄せ」が並ぶ。
「ならわし」と言ってみたが、意地悪い見方をするなら、非農民である都市部の人たちがファッションとして、洗練された形にしたものとも言える。19世紀ヨーロッパ全土に広まった民族覚醒の気運が作らせた「伝統的風習」だということはわかっている。エリック・ホブズボウムの『創られた伝統』の典型例だ。それでも、一世紀以上、続いていれば、もう立派な伝統と言えなくもないが。
日本でもいつの日か、「恵方巻き」や「ハロウィーン」が伝統行事と名乗れるようになるのかな?
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