2016年6月2日木曜日

バロック音楽とアイリッシュ

音楽に恵まれた5月の最終日、イタリア文化会館でのバロック・アンサンブルが、わたしにとって締めのコンサートとなった。〈アカデミア・ヘルマンス〉という、ウンブリアで活動しているグループから、バロックチェロ、木管フルート、チェンバロのトリオが参加。ヴェネツィア学派のヴィヴァルディ、アルビノーニ、マルチェッロ兄弟といった代表的作曲家の作品を、緊密な演奏の掛け合いで展開してくれた。

バロック音楽など、ずいぶん昔に食傷し、わざわざ聴くこともないと思っていた。ところが、蝶の群れがひらひら飛び交うような音空間のなかにいるだけで、ひたすら心地よさにひたることになった。
BGMとしてむやみに流されるせいで、バロック音楽全体に、なめらかでつるつるした新建材のようなイメージができてしまったが、ほんらいは演奏ひとつで風合いが変わるものだ。

アンコールで3人はちょっとした遊びを披露してくれた。さきほど弾いた楽章を、ビートの効いた演奏に変え、チェンバロの底を太鼓がわりに打ち鳴らして、ダンス曲に仕立てたのだ。ずっとこの調子で演奏してくれてもよかったのに。とはいえ、これが定番になったら、また飽きられるだろう。


アイルランドの伝統音楽の数あるバンドのひとつ、デ・ダナン(De Dannan)は、ダンス曲をバロック風にアレンジして圧倒的な人気をえた。当時としては斬新そのもので、アイリッシュ音楽流行りの波の先端に乗っていた。そのバロック風アイリッシュも、今となっては一過性の技法にすぎなかったのかもしれない。

DeDannan - Arrival of the Queen of Sheba 

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